不妊治療における子宮鏡下手術

子宮鏡下手術とは

子宮鏡下手術とは、内視鏡を子宮内に挿入し、モニターで子宮内の状態をリアルタイムで観察しながら子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫の切除などを行う手術です。

この手法を用いることで、腹部に大きな切開を必要とせず、最小限の侵襲で手術が可能です。

そのため、手術後の回復が早く、痛みや不快感が少ないのが特徴です。お腹に傷も残りません。術後は比較的短期間で日常生活に戻れることが多いです。

不妊治療で子宮鏡下手術が選択されるケース

子宮内膜ポリープ・子宮粘膜下筋腫・子宮腔癒着などが見つかり、妊娠のために取り除いたり、癒着を剥がした方が良いと判断された場合に行います。

子宮鏡下手術の流れ:子宮内膜ポリープ切除術(HSP)

子宮内に細いカメラ(子宮鏡)を挿入し、子宮内に灌流液(生理食塩水)を注入しながら、子宮鏡を通して挿入したスアネ(ワイヤーで出来たループ状の器具)にポリープを引っ掛けて切除する手術です。

この手術は日帰りで行われ、麻酔を使用せず実施することが一般的です。

1.手術日の決定

診察で医師より手術の説明があります。術前検査を行い、その後予約をします。

手術は月経が終了してから排卵日前(おおよそ月経が始まってから10日目くらい)までに行います。

2.手術当日

当日は13時に来院していただき、受付後にリカバリー室へご案内します。

手術にかかる時間は5〜10分程度です。

手術中は、モニターでご自身でも処置の様子を見ることができます。

術後は医師による説明が行われ、リカバリー室で安静後に帰宅します。

基本は無麻酔ですが、痛みが強い場合は軽く麻酔をかけることがあります。

*ポリープが硬い場合や、大きさ、形態、位置などの関係からスネアをひっかけることが難しい場合は、後日別の手術を行うことがあります。

3.帰宅

気分不快・出血などの問題がなければ、会計後に退院となります。

処置当日の入浴はシャワー浴にとどめ、性行為や激しい運動などは控えてください。

子宮鏡下手術の流れ:子宮内膜ポリープ切除術(IBS)

子宮内に細いカメラを挿入し、還流液(生理食塩水)を注入しながら、シェーバーで子宮内膜ポリープを削り取り、灌流液とともに吸引・排出します。

正常な子宮内膜を傷つけることがないため、子宮内膜への負担が少ない手術です。

この手術は日帰りで行われ、静脈麻酔で実施します。

1.手術日の決定

検査によりポリープが確認されIBS適応と医師より診断された場合、手術の説明があり、術前検査が行われます。

手術は月経終了後から排卵日前(おおよそ月経開始12日目ごろ)までに行います。

2.手術当日

当日は11時に来院していただき、受付後にリカバリー室にご案内します。

リカバリー室にてお着替えをしていただき、問診を行い麻酔用の点滴を実施します。

準備後、手術室に移動し、静脈麻酔をして手術を行います。

手術時間は5〜15分程度で、痛みを感じることなく終了します。

術後は、2時間ほどリカバリー室で休息します。

気分不快、出血などの問題がなければ、術後の注意点などの説明を受け退院となります。

3.帰宅

経過をみて問題がなければ、会計後退院となります。

 1週間後に診察に来院していただき、病理の結果を説明します。

それまでは、入浴はシャワー浴とし、激しい運動や性行為を避けるようにしてください。

子宮鏡下手術の流れ:子宮鏡下手術(TCR)

レゼスコープと呼ばれる手術用の子宮鏡を子宮の中に挿入し、灌流液で満たしながら、電気メスで、病巣の切除や癒着剥離などを行います。

この手術は平均して3日程度の入院が必要です。

1.手術日の決定

まず、子宮鏡検査や超音波検査、MRIなどで子宮鏡下手術(TCR)の適応を確認します。

適応が確認されたら医師による手術の説明があります。その後、術前検査を実施し、手術日を相談して決定します。

2.入院(手術前日)

13時に来院していただき、診察後に入院病棟へ案内します。

病室で問診、同意書等の確認、入院生活・手術日の流れなどの説明をします。

3.手術当日

手術当日の朝、子宮の入り口を軟らかくするための処置をします。

診察後、病室で手術着に着替え、持続点滴を開始します。

手術は15〜30分程度で終了します。

術後、病室で2時間ほど経過を見て、麻酔から覚めていれば夕飯から食事が開始となり、持続点滴も終了します。

*ご家族には13時頃に来院していただきます。手術中は必ず病室でお待ちください。術後、医師から説明があります。

4.退院(手術翌日)

診察後、問題がなければ退院可能です。

処方薬を指示通りに内服し、次回の診察日に来院してください。

不妊治療で子宮鏡下手術を実施するリスク・副作用

1.痛み:月経痛に似た鈍痛を感じる場合があります。処置終了後に腹痛が出現する人も稀にいます。
2.出血:粘膜・組織損傷部や切除部分より出血が多少あります。出血が多い場合は止血が必要になる場合もあります。
3.薬剤による副作用:抗生剤や麻酔薬などで、薬疹・ショックなどが稀に発生します。
4.骨盤腹膜炎:腹腔内に感染症が発症した場合は腹痛や発熱が伴います。
5.その他:稀に子宮穿孔(子宮に穴が開くこと)や水中毒などのリスクがあります。

不妊治療で子宮鏡下手術を実施する場合の費用(当院の場合)

術式費用
子宮内膜ポリープ切除術(HSP)約20,000円
子宮内膜ポリープ切除術(IBS)29,000〜30,000円
子宮鏡下手術(TCR)50,000〜70,000円

料金は保険適用時の目安です。別途処置料・処方薬が追加になる場合もあります。

当院の子宮鏡下手術について

妊娠において、着床部位である子宮内膜は非常に大切な部分といえます。

当院では内膜ポリープのみを粉砕し正常子宮内膜をきずつけることがなく切除でき、子宮内膜に負担の少ない「シェーバーを用いた子宮鏡下内膜ポリープ切除(IBS)」を導入しています。

患者様それぞれの治療状況や子宮内膜の症状にあった子宮鏡下手術を選択します。

術後の不調に対しては24時間対応致します。

不妊治療における子宮鏡下手術に関してよくある質問

Q.入院する必要はありますか?

手術の種類によって異なります。

・子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術:基本日帰り
・子宮鏡下手術(TCR):3日程度の入院

Q.手術は痛いですか?

手術中に痛みを訴える方はほとんどいませんが、術後に痛みがあれば痛み止めを使用します。

Q.手術は確実に成功しますか?

ポリープの大きさ・形態・位置などの関係で切除できない場合もあります。

Q.手術前後の避妊は必要ですか?

妊娠の可能性がある場合、手術は行えませんので術前は避妊が必要です。
術後は経過を診ながら性交可能の許可が出ます。