凍結融解胚移植

凍結融解胚移植とは

現在、日本では凍結技術が進歩し、日本産婦人科学会の報告でも凍結融解胚移植の方が新鮮胚移植よりも妊娠率が高いとされています。したがって、全胚凍結を実施して次周期以降に凍結融解胚移植をする方法が主流になっています。

新鮮胚移植を望む場合でも、以下の場合は特に凍結融解胚移植を勧めることがあります。

凍結融解胚移植を実施すべきケース

凍結可能な良好胚が得られ、かつ以下のようなケースでは凍結融解胚移植を勧めます。

・卵巣過剰刺激症候群となり、妊娠すると症状の悪化が予想される場合
・子宮内膜の状態が不良である場合
・過去に良好新鮮胚を何度か移植して結果が出ていない場合  
・採卵前に黄体ホルモンが上昇してしまった場合
・PPOS周期の場合

凍結融解胚移植の種類

凍結融解胚移植には、「ホルモン補充周期法」と「自然周期法」の2種類があります。

ホルモン補充周期法

ホルモン補充により内膜を発育させ、内膜の厚さを確認しながら移植日を決める方法です。

自然周期法

患者様の排卵周期に合わせ、排卵後2〜5日目(移植する胚による)に移植する方法です。

凍結融解胚移植の流れ

凍結融解胚移植は、以下の流れで進めます。

  1. 凍結保存
  2. 融解
  3. 移植

1.保存

初期胚、胚盤胞ともにガラス化法という方法で凍結します。

凍結保護剤を使用し、胚が凍結障害をうけにくい状態にした後、液体窒素を使用し、-196℃まで温度を低下させます。液体窒素中では、年月による胚の損傷はほとんどみられません。

2.融解

凍結胚の融解には急速融解法を用います。融解後、回復培養を行い、最終的な状態を確認します。

3.移植

回復培養後、細い移植カテーテルに胚を詰め、腹部エコーで子宮内の最適な移植場所を確認しながら移植を行います。痛みはほとんどありません。

凍結融解胚移植での妊娠確率

凍結融解胚移植のリスク・デメリット

凍結・融解により胚が損傷を受け、胚移植ができなくなることがあります。

なお、凍結融解胚移植においての妊娠率、妊娠後の周産期のリスク、先天奇形率などは、新鮮胚移植と差はないと報告されています。とはいえ、今後何らかの問題点が発見される可能性がないとは言えません。

凍結融解胚移植の注意点

凍結胚を胚移植するためには、ご夫婦の同意が必要となります。又、代理出産などが日本では認められていないため、以下の条項にあてはまる場合には凍結胚を廃棄させていただきます。

・夫婦が離婚したとき
・夫婦又は夫婦のどちらかが死亡したとき
・夫婦お二人の意志として廃棄の申し出があったとき
・胚の保存管理期間が1年を越え、延長手続き時に夫婦の延長の申し出がないとき(同意書の提出と保存管理費用の入金をもって手続き完了とする)
・母体の生殖年齢(50歳)を越えたとき
・転居などにより連絡が取れないとき
・疾患などにより子宮を失ったとき(医療の進歩により子宮移植が可能になった場合この限りではない)
・妊娠・出産が母体に重大な健康障害を与えると予想されるなどの理由により移植できないと判断したとき
・移植が出来ないと医師が判断した場合

当院における凍結融解胚移植の目安費用

当院の凍結保存の特徴

現在、日本の大多数の施設では、胚を直接液体窒素に接触させるオープン法で凍結保存・保管が行われています。

当院では2013年7月からVitrolife社のRapid-i™を使用して、感染対策をより厳密に行うために液体窒素に接触することのない完全クローズ法を行っています。